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上廣・カーネギー・オックスフォード倫理会議 2006年度


自由貿易、公正貿易と持続可能な貿易:地下資源の場合

  期日:2006年12月7日~8日
  場所:米国カーネギー・カウンシル メリルハウス(NY)


                                 東京大学中川淳司教授報告
1.会議テーマ
「自由貿易(free trade)」「公正貿易(fair trade)」「持続可能な貿易(sustainable trade)」の3者はいずれも世界貿易システムを支える重要な理念であるが、これらは常に予定調和的に 実現されるとは限らない。時に矛盾し衝突する可能性のあるこれらの理念の均衡をいかに図る かは国際貿易における倫理の追求のために避けて通れない重要な実践的課題である。本会議は、 資源貿易に焦点を当てながら、国際貿易におけるこれらの理念の調整のあり方を多角的に検討した。

2.会議の概要
第1日(12月7日)‐対外政策における自由貿易、公正貿易と持続可能な貿易
  カーネギーカウンシルのローゼンタール理事長より挨拶

第1セッション(午前)「人権・公正促進のために貿易を活用することの可否と是非
パネリスト バリー講師(ダブリン大学)
       クーパー氏(NPO法人Ashoka)
       リンカーン教授(ニューヨーク大学)
標記テーマにつき、人権侵害を理由とする貿易制裁の効果に対する消極的な意見(リンカーン 教授)、貿易制裁よりは人権促進への報償(reward)としての貿易自由化を活用すべきとの意見 (バリー講師)と市民社会・民間企業を巻き込んだネットワークを構築して貿易を人権・公正促進 のために活用すべきとの意見(クーパー氏)が述べられ、その後フロアを含めて活発に意見交換 が行われた。

第2セッション(午後)「可能なことと望ましいことをいかに調整するか:
                      自由貿易、公正貿易、持続可能な貿易の調整」
パネリスト コンロイ氏(Rockefeller Brothers Fundプログラムディレクター)
       福田=Parr氏(ニュースクール大学客員教授)
       リッセ教授(ハーヴァード大学)
福田=Parr氏は人権侵害を理由とする貿易制裁が対象国の貧困者に与える悪影響への配慮の必要性に言及した。リッセ教授は先進国の農産物輸出補助金の撤廃がもたらす最貧国へのマイナス効果を指摘した。以上の二人が主として政府のとりうる措置とその限界(governmental reach)を論じたのに対して、コンロイ氏は、市民社会が企業の社会的責任を追及し、環境配慮(森林認証制度など)、人権配慮を先進国企業に求めることの意義を強調した。各々について賛否を交えた議論が行われた。

第3セッション(午後)「公正貿易の制度化は可能か?」
パネリスト マルホトラ氏(UNDP)
       中川淳司(東京大学;フレッチャースクール)
マルホトラ氏は、WTOのドーハ交渉が途上国への十分な配慮を欠いていることから、人間開発(human development)の観点から交渉アジェンダを再評価し見直すことを主張した。中川は、ドーハ交渉が後発途上国に有利な結果をもたらす可能性が低いことを指摘して、WTOと世界銀行その他の援助機関との協力による後発途上国援助の組織化の必要性を指摘した。フロアからの質疑では、WTO協定の中でも特に貿易関連知的財産権協定(TRIPS協定)の途上国に対する意義について議論が集中した。

第2日(12月8日)‐地下資源保有途上国における開発の促進
第1セッション(午前)「人権侵害国との貿易」
パネリスト ロディン博士(オクスフォード大学)
       スラック氏(Oxfam America)
討論者   福田=Parr教授(ニュースクール大学)
ロディン博士は人権侵害国に対する貿易制裁の是非について、応用倫理学の立場から多角的に検討した。スラック氏は地下資源保有途上国の貿易・開発戦略と先進国及び世界銀行その他の国際金融機関の戦略の見直しの必要性を強調した。福田=Parr教授は、途上国の地下資源問題に1970年代以来久しぶりに脚光が当たったことを評価しつつ、雇用・国際一次産品貿易・腐敗防止などの観点からさらに検討が必要との見方を示した。これらの点をめぐって、フロアも参加して活発な討議が行われた。

第2セッション(午前)「価格決定と技術」
パネリスト デル氏(Sustainable Profitability Group)
討論者   コンロイ氏(Rockefeller Brothers Fund)
       スラック氏(Oxfam America)
デル氏は、化石燃料(石炭・石油)が地球温暖化と持続可能性にもたらす悪影響の認識から出発して、化石燃料の国際貿易に大きく依存している現在の世界経済システムを変革するためにいかなる方策が可能かについて、多角的な問題提起を行った。これに対して、コンロイ氏、スラック氏及びフロアから賛否含めて多様な見解が示された。

第3セッション(午後)「世界の資源配分と資源貿易」
パネリスト ポッゲ教授(コロンビア大学)
       レディ教授(コロンビア大学)
ポッゲ教授は、中国が人権侵害のはなはだしい地下資源保有国と貿易取引を行っていることを厳しく批判する議論を展開した。これに対してレディ教授は地下資源保有国が資源輸出に依存することが経済学的には必ずしも不合理とはいえないと主張した。中国国連代表部のオブザーバーとの間でも質疑が行われた。

第4セッション(午後)「グローバルな倫理における中国の扱い」
パネリスト シン氏(ジョージワシントン大学)
討論者   クライネ=アールブラント氏(Council on Foreign Relations)
2006年11月初旬に中国が開催したアフリカサミットを初めとする中国の対アフリカ資源外交について、シン氏がその背景と意義について詳細に紹介した。クライネ=アールブラント氏は、中国外交における非西欧的要素に着目することの重要性を強調、第3セッションに引き続いて、中国国連代表部オブザーバーとの意見交換も交え、中国の対アフリカ資源外交について活発な議論が行われた。
午後5時~ カーネギーカウンシルのローゼンタール理事長より会議参加者へ短い感謝の言葉が述べられた。続いて、主催者を代表して、上廣倫理財団丸山事務局長より、会議参加者へのねぎらいと感謝とともに、織田信長の楽市楽座の故事に言及して世界貿易の発展の重要性を説く締めくくりの挨拶が述べられ、5時30分会議は終了した。(文責:中川淳司)

3 参加者
主催者側:
  Joel H.Rosenthal (President, Carnegie Council)
  Julian Savulescu (Director, Oxford Uehiro Centre for Practical Ethics)
  Noboru Maruyama (General Secretary, The Uehiro Foundation)
  Devin Stewart (Program Director, GPI, Carnegie Council)

パネリスト:
  Christian Barry (Lecturer, University College Dublin)
  Michael E.Conroy (Program Director for Global Governance, Rockfeller Brothers Fund)
  David Dell (President, Sustainable Profitability Group)
  Sakiko Fukuda-Parr (Visiting Professor, Graduate Program in International Affairs,
                New School University)
  Andrew Kuper (Managing Director for Strategic Partnership, Ashoka)
  Edward Lincoln (Director, Center for Japan-U.S. Business, New York University)
  Kamal Malhotra (Senior Advisor on Inclusive Globalisation, UNDP)
  Junji Nakagawa (Professor of International Economic Law, Institute of Social Science,
             University of Tokyo;
             Visiting Professor, Fletcher School, Tufts University (2006~2007))
  Thomas Pogge (Professor of Political Science, Columbia University)
  Sanjay G.Reddy (Assistant Professor of Economics, Barnard College, Columbia University)
  Mathias Risse (Associate Professor of Public Policy and Philosophy, Kennedy School of
            Government, Harvard University)
  David Rodin (Director of Research, Oxford Uehiro Centre for Practical Ethics)
  David Shinn (Adjunct Professor of International Affairs, George Washington University)
  Keith Slack (Senior Policy Advisor, Oxfam America)

討論者:
  Joshua Eisenman (Fellow in Asia Studies, American Foreign Policy Council)
  Stephanie T. Kleine-Ahlbrandt (International Affairs Fellow, Council on Foreign
                       Relations)
オブザーバー:
  Iván Camilo Rebolledo (President, Bolivian American Chamber of Commerce)
  Ann Goodman (Executive Director, Women’s Network for a Sustainable Future)
  Catherine Lieber Shimony (Co-Founder and Co-Director, Global Goods Partners)
  Evan O’Neil (Managing Editor, Policy Innovations, Carnegie Council)
  Matt Peterson (Assistant Editor, Ethics & International Affairs Journal)
  中国国連代表部よりオブザーバー1名参加(12月8日)




※2005年度の会議報告
※2004年度の会議報告
※2003年度の会議報告
※2002年度以前の会議報告

 

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